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2025
TECHNOLOGY

開発ストーリー #01 VASA® という新たな挑戦〜松本佳久教授

Ultra-High Purityのスタートダッシュは、自ら納得できるものとなりました。松本佳久教授の最新研究成果に基づく技術移転を受けた弊社は、おかげさまで設立1年目にしてプロトタイプ実証機の開発を行い、2025年2月に東京ビッグサイトで開催された水素・燃料電池展への出展を果たしました。現在、さまざまな実証を重ねつつ、新たな技術検証にチャレンジしています。
さて今回より新企画として、現在進行形の実証実験のレポートといった開発の進捗や技術トピックを「開発ストーリー」として掲載してまいります。第1回は『VASA®という新たな挑戦』と題し、昨年、弊社取締役に就任した松本教授の開発に賭ける覚悟、そして水素社会実現に向けた思いをお伝えいたします。

VASA®という新たな挑戦

– バナジウム合金で切り拓く超高純度水素の未来 –

 水素社会の実現に向けて、いま再び素材科学の挑戦が始まろうとしています。私たちの研究室では、長年にわたり水素分離膜の基礎研究に取り組んできました。従来、膜分離法による水素精製にはパラジウム合金膜が使われてきましたが、資源的な制約やコスト、耐久性の課題が立ちはだかっています。そこで私が新たに注目したのが「バナジウム合金」、そしてその可能性をさらに広げる「バナジウム超合金」の存在です。

 バナジウムはパラジウムと比べて遥かに安価でありながら、水素透過性に優れた金属です。私たちはこの素材の可能性に着目し、様々な元素との合金化やナノ構造制御によって、パラジウムに匹敵、あるいはそれを超える性能を持つ水素分離膜の開発に成功しつつあります。

 現在、これらの成果を基に、新たな水素モジュール・デバイスの設計と試作に取り組んでいます。このモジュール・デバイスは、従来にない薄板構造と表面処理技術により、極めて高い水素選択性と水素透過速度を実現しており、最小工程で理論純度100%の水素を精製することができます。さらに、産業化を見据えた長期安定性や繰り返し耐性についても検証を重ねており、実用化への確かな手応えを感じています。

 水素社会の実現の鍵を握るのは、単に「水素を作る」ことではなく、「超高純度の水素を効率良く、持続可能な方法で得る」ことです。私たちはこの技術を通じて、エネルギー、環境、そして産業の未来に貢献したいと考えています。バナジウム合金という新たな材料に込めた希望と情熱を胸に・・・・。

松本 佳久